記憶の海へ

――皆川燈・俳句Site
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『緑色研究』入門  〜短歌もどきの試験管をゆさぶって〜

嬰児蠅瞳向日葵ポロネーズみなさみどりの体毛もてり
おそるべきさみどり蝶になる前の

大いなる桜大樹につながれて小さな家はどこへもゆけず
デラシネの次女が立ち寄る春のバル

立川駅に滑り込むとき中央線は子犬のように鳴くことありぬ
逃げ水やわたしの犬がふりかえる

うれしさにたまらんとばかり追いかけておさえていたりうすばかげろう
翡翠の自爆へ藤のつるそよぐ

傷んでる? 泣いて瞼をはらしてるだけではあるがそうかもしれぬ
左岸というやさしさへ靡け梅花藻

あおみどろうかべまどろむ古沼を脚そよがせてゆきすぎにけり
著莪の花咲く入口がみつからない

鞠投げあったりして幸せな日々でした市ヶ谷本村町は新緑
花盛りの森よ日当るバルコンよ

森の奥へ電車大きくカーブして乗客はみな影絵のごとし
囀りやまず地球へ戻りそこなって

散骨の水辺に立ちてながめれば湖はさざなみ歌いつつくる
小梨咲きたましいやわらかくなりぬ

駅前のボクシングジムの看板の赤いコブシが虚無へ突き出す
長考の迷路をゆけば桜実に

西多摩の若草色のガスタンクまるくひかって百年後もあるか
埋めもどす廃都の月のかけらかな

毛づくろい邪魔されたからとりいそぎ歳月の裏へ避難したんだ
尋ね人の時間がはじまる新緑が痛い

図書館で『ときめき片づけ術』借りてドコモへ寄ってそれからどこへ
檸檬ぎゅっと搾れば裾野はるけしや

ヒナギク荘二階に一人まどろみて三〇〇年をうかと過ごせり
悲しみのおかっぱとなるクレッソン

夕暮は河骨点る沼となる水の国にも夕餉あるらん
黄昏をとろりかきわけ亀ゆけり

石段を下れば電話ボックスが今にも流されそうに立ってた
青梅をころんと夜のはじまりに

ひたひたと寄せる近江の真水あり浮御堂まで歩いて候
さみだれのにおい緑色研究は

「らん詠(「羽」)」
翅できるまでさみどりをひたねむる

(「らん 70号」15.7.10)
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